1.はじめに
中掘り先端拡大根固め杭では、杭と杭先端部に作成する拡大根固め球根とが一体となって、大きな支持力が発揮されるため、杭先端部の拡大根固め球根を作成する上での品質が最も重要な要素となる。その支持力に最も影響を及ぼすと考えられる品質管理項目は、「拡大根固め球根の形状・寸法の管理」と「拡大根固め球根の強度管理」である。そこで、現状での管理手法の問題点を解決する一つの試みとして試作した装置の概要と、その装置による実証実験の概要について紹介する。
2.現状の管理手法の問題点と試作装置の概要
2.1 現状の管理手法の問題点
現状の管理手法は、拡大ヘッドに取り付けている拡大翼の拡翼状況で確認している。具体的には、拡大ヘッドは、大半の工法で拡大翼が水平または上下に開閉するものであり、その機構は土の抵抗で開閉する仕組みになっている。
そこで、現状での拡大翼の拡大状況の確認手法は、回転を一旦止めて引き上げ、拡大翼が杭先端に接触する際の抵抗で確認している。しかし、この機構のものは実際どの程度拡大しているのか、完全に拡大しているのか確認出来ない等の問題点がある。
2 .2 試作装置の概要
現状の拡大根固め球根の形状・寸法の管理手法の問題点を解決する一つの試みとして試作した。試作装置は、鋼管杭を対象としている。
装置は、掘削装置本体、二重管ロッド、拡大翼開閉装置付き先端掘削装置および管理装置から構成される。拡大翼は、内管と接続されており、内管を下げると拡大翼が開き、上げると拡大翼が閉じる。管理装置は、デイスプレイ、CPU、ADコンバータ、プリンターおよび各種センサー(深度計、流量計、変位計)から構成される。
具体的に地中深いところで、拡大翼の開閉状況を確認する手段としては、次の手法で行う。まず、空中で、拡大翼が完全に開いた時と閉じた時の油圧シリンダーの変位量を事前に測定しておく。そして、地中深い杭先端部における拡大翼の開閉状況の確認は、油圧シリンダーの変位量を検出することによって確認できる仕組みに成っている。
実際の施工時における管理装置の管理手法は、まず事前に現場データ、杭データ、施工データおよび球根部データ等を入力する。そして、施工時に油圧シリンダーの変位量と、深度およびセメントミルクの注入量のデータをリアルタイムで取り込むことによって、パソコンのデイスプレイに球根作成時の状態をモニタリングするようにしている。
ここで、デイスプレイに拡大翼が開いた状態を作図するには、事前に調べたシリンダーの変位量が完全に開いた時の値が入力されない限り作図出来ないようになっている。つまり、本装置は、デイスプレイに拡大翼が開いた状態が作図されたら、拡大翼は完全に開いたと判断でき、地中深い所での拡大翼の開閉状態、位置およびセメントミルクの注入状況を、地上にある管理装置のデイスプレイで確実に管理できる仕組みになっている。
3.試作装置での実証実験の概要
試作装置での実証実験は、以下の項目を確認することを目的として実施し、次の結果が得られた。
@いずれの地盤においても、試作装置での拡大根固め球根作成工程で、に示すように、管理装置のデイスプレイに拡大翼が確実に開いた状態と、時々刻々の拡大掘削状況・セメントミルクの注入状況および上下反復撹拌・混合状況をモニタリングする事が
出来た。
A掘り出した拡大根固め球根の寸法は、直径(上、中、下3箇所)と高さ(東西南北の4箇所)を測定したところ、仕様以上のものが出来ていた。
以上のことから、管理装置のデイスプレイに拡大翼が確実に開いた状態を含めて設定通りにモニタリングできれば、拡大翼は確実に開き、仕様以上の寸法の拡大根固め球根を作成できることが確認出来た。
4.あとがき
以上、現状での拡大根固め球根の形状・寸法の管理手法の問題点を解決する一つの試みとして試作した装置および実証実験の概要について紹介した。
今後は、拡大翼の形状を含めて機械装置の能力や管理装置のモニタに出力する内容、さらには装置の実用性やその他の管理項目等について、さらなる調査・研究を行い、実用化に向けて進めていきたいと考えている。
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